以前にも書いたように、生保一般勘定という商品の仕組みは「生保会社が顧客から預かった資金を、一般勘定(団体年金区分)で運用し、予定利息と配当の形で顧客に還元する」というものです。
ただし、生保各社によって資産運用方法や還元方法などには当然ながら違いがあります。
なお、還元方法とは「予定利息として還元するか配当として還元するか」という意味です。
生保各社の顧客還元率(予定利率、配当率)の推移

上の図は2021年度以降の生保各社の顧客還元実績(予定利率および配当率)の推移をグラフにまとめたものです。
このグラフから推測される各社の還元政策についてコメントしてみます。
①顧客還元に最も積極的なのは富国生命です。
予定利率は依然として1.3%を維持していまする。
また、配当率も高水準を維持していて、「予定利率+配当率」合計でみた顧客還元利回りは、他社を圧倒する水準を保っています 。
②住友生命は予定利率の確保に重点を置いていると思われます。
予定利率は現時点でも1.25%を維持していますが、上図でわかるように配当還元については限定的です。
なお、住友生命の団体年金区分の資産ポートフォリオを確認すると、国内株式は含まれておらず、債券がポートフォリオの太宗を占めています。
1.25%の予定利率を維持するために、債券を中心としたポートフォリオを構築しているものと推測されます。
③明治安田生命は「顧客に対する保証利率の提供と団体年金区分の健全性確保の両立」を意図した政策を採用していると推測されます。
2024年度までは1.25%の予定利率を維持する一方で、配当還元は行っていません。
2025年度からは予定利率は0.5%まで引下げる一方で、3階建てスキームを採用し1.3%の保証利率提供を行っています。
また、2025年度は配当による還元も行っており、予定利率引下げによる顧客デメリットを抑制する方策をとっています。
④日本生命の還元率の推移をみると、2023年度の予定利率引下げ後は、配当還元をそれ以前よりも増やし、「予定利率+配当率」で従前の予定利率である1.25%を超える還元を行っています。
それにもかかわらず、2023年度以降は一般勘定の責任準備金が減少しており、予定利率引下げの顧客に与えるデメリットは増配では補えていないようです。
なお、2026年度から明治安田生命類似の3階建てスキームを採用することで、実質的に保証利率の引上げを行うこととしました。
④顧客還元に最もネガティブな姿勢を見せているのは第一生命です。
0.25%という極端に低い予定利率の採用だけでなく、上図で分かるように「予定利率+配当率」の合計でも2023年度までは他社に大きく見劣りする水準でした。
原理原則を踏まえると「予定利率の引下げにより必要リスクバッファーが小さくなり、その効果で配当還元は他社を凌駕する」のが本来の形だと考えられます。
したがって、2023年度までの消極的な顧客還元については、顧客からの理解は得られないものと思われます。
なお、2025年度の配当は大幅に積み増しを行っています。
顧客還元方針が2025年度に変化した背景は不明ですが、責任準備金残高の継続的な減少が影響した可能性もあります。
一般勘定の予定利率は長きにわたってほぼ横並びであったため、企業年金にとっては「どこの生保会社の商品を採用しても大差はない」と考えることもできました。
しかし、ここまで述べたように、近年は予定利率も配当政策も各社で大きな違いがあります。
したがって、生保一般勘定に投資する際は「どこの生保会社を利用するか」という観点での検討も欠かせないと考えます。