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生保一般勘定の研究⑫ ~ どの生保会社を選ぶか(その2)

前回の記事に続いて、今回も「生保一般勘定に投資する際の生保会社の選択」に関して考察します。

生保会社を選択する際の着眼点と指標

(4) 団体年金区分の収益性

以前にも投稿しましたが、生保一般勘定の予定利率と配当率の財源は、団体年金区分で保有している資産からの運用収益です
したがって、生保一般勘定からどの程度の還元が期待できるかを検討するためには、団体年金区分の収益性を評価することが必要になります。

収益性の実績を評価するためには、決算の利回りを資産クラス別に確認することが有効です。
ただし、簿価ベースの利回りは恣意的に操作可能なので、インカム利回りと時価利回りを確認することが必須です。
今後の収益性を評価するためには、保有資産の構成と各資産の期待運用収益を評価することになります。
キャピタル関係は不確定ですが、インカム収益については保有資産の利回りや残存期間別構成などを確認すればある程度の予測は可能になりますし、生保会社間での比較も行うことができます。

なお、一般勘定全体のディスクロージャー資料では、これらの保有資産の収益性を評価する情報が概ね開示されています。
しかし、団体年金区分で保有する資産の収益性を評価する情報は十分には開示されていませんので、年金基金や企業年金側で生保会社に要求することが望まれます 。

(5) 団体年金区分のリスク耐性

生保会社の団体年金区分では債券のような安全性資産だけではなく、株式や外国証券などのリスク性資産にも投資しています。
そのため、リーマンショックのような大きなストレスイベントが発生すれば、当然ながら団体年金区分でも大きな損失が発生する可能性があります。

そのような損益状況の場合に、生保会社は団体年金区分で保有しているリスクバッファーを取り崩して予定利率保証を行います。
したがって、予定利率保証の頑健性を評価するためには、リスクバッファーの水準を評価することが欠かせません。

残念ながらこの点についても生保会社の開示は不十分です。
株式含み益の開示は各社とも行っていますが、オンバランスのリスクバッファーの開示については各社で濃淡があり、一部の生保ではまったく開示を行っていません。
改善が望まれます。

(6) 団体年金区分の剰余金の状況

現在、生保会社が団体年金区分の決算報告用に作成している資料には、損益計算書は含まれていません。
資産運用収益・費用の内訳は開示されていますが、それ以外の収益・費用は開示されていません。
そのため顧客にとって重要な以下のような情報は全く分かりません。

●団体年金区分のインカム利回りと配当率の差の部分、言い換えれば顧客に還元されない収益はどのように処理されているのか。
●団体年金事業にどの程度のコスト(人件費や物件費など)がかかっているか。
●会社全体の費用、例えば本社ビルや全社に係るシステム投資の減価償却費、本社部門の人件費や物件費等の費用を団体年金区分ではどの程度負担しているか
●法人税の負担は団体年金区分でどの程度行っているか。
●株式会社の場合、株主配当の負担を団体年金区分でどの程度行っているか。

生保会社の顧客への還元状況や還元姿勢を正しく評価するためには、資産運用関係損益に加えてこれらの情報も必要です。
団体年金区分の損益計算書が開示されれば、年金基金や企業年金側でコスト全体を評価することが可能になりますので、この点についても改善が望まれます。

(7) 顧客還元への期待

生保会社の顧客還元姿勢には各社間で差があります。
私は以前に証券会社で年金コンサルティング業務を担当していました。
その際には生保会社の団体年金担当者と接する機会が度々ありましたし、彼らとコミュニケーションする中で、各社の顧客還元姿勢の違いを感じることが度々ありました。

例えば、ある生保は「株主への還元を最優先としていて、顧客還元にはネガティブな姿勢」が明白でした。
一方で、「新ソルベンシー規制対応のためには予定利率を見直さざるを得ないが、顧客の負担や悪影響もできるだけ避けたい」と考えている生保会社もありました。
また、「予定利率保証をしているのだから、それ以上の還元はできるだけ避けたい」と考えている生保もありました。

このような還元姿勢が、予定利率(体系・水準)や配当率に関する各社間の差となって顕在化するのだと私は考えています。
したがって、今後の一般勘定投資にあたっては、生保会社の還元姿勢を考慮することも不可欠だと言えます。
年金基金や企業年金においては、生保側担当者等とのコミュニケーションなどを通じて、各社の顧客還元姿勢を定性的に評価することが望まれます。