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生保一般勘定の研究⑪ ~ どの生保会社を選ぶか(その1)

2021年以前は生保一般勘定の予定利率は大手生保4社では同一でした。
富国生命の予定利率は1.3%でしたが、概ね「どこの生保に預けても大差はない」という感覚を企業年金関係者はもっていたと思います。

しかし、現在はまったく環境が変わりました。
予定利率については、最も高い富国生命は1.3%、最も低い第一生命は0.25%です。
また、日本生命と明治安田生命は3階建ての予定利率・配当率体系を採用しています。
さらに、最近は配当率についても生保会社間で大きな差がついています。

したがって、企業年金がこれから生保一般勘定に資金を預ける場合は、生保会社の選択次第で将来のリターンに大きな差が出る可能性があります。
従来のような「どこでも大差はない」という姿勢ではなく、企業年金側が生保会社の選択を慎重に行うことも重要だと考えます。

このような問題意識から、今回は「生保一般勘定に投資する際の生保会社の選択」について、着眼点と考え方を検討してみようと思います。
なお、少し長くなりますので、今回と次回の2回に分けて書いてみます。

生保会社を選択する際の着眼点と指標

上の表は「生保会社を選択する際の着眼点と指標」を整理してみたものです。
以下に、それぞれの着眼点についての補足説明を書きます。

(1) 健全性

まず、最初に健全性の観点で生保会社の破綻リスクを評価することが必要です。
生保会社が破綻した場合は責任準備金が削減されるリスクがあります。
実際、過去の事例では8度の破綻のうち6つのケースでは責任準備金の削減が行われました

健全性の指標としてはESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)を確認することになります。
100%以上が健全性の目安ですが、大手生保(日本・第一・明治安田・住友)および富国生命の連結ESRは2026年3月末時点で200%近傍にあります。
したがって、現時点ではどこの生保会社であっても破綻リスクは小さいと評価できます 。

(2) 保証利率の期待値

2点目の着眼点は「保証利率の期待値」、言い換えれば「確実に保証される利率の水準」です。
年金基金や企業年金が基本ポートフォリオを策定する際には、資産別に期待リターンを設定することが必要になります。
生保一般勘定のリターンは保証利率(予定利率)と配当率から構成されますが、配当率については不確実なので、期待リターンとしては確実に保証される予定利率を用いることが基本となります。

ただし、日本生命と明治安田生命は保証利率が2階建てとなっていますので、期待リターンとしては1階部分および2階部分の保証利率の合計とすればよいでしょう。
なお、2階部分については、3年間は確定しているとともに、その後の3年間についても最低保証利率が設定されています。
期待リターンを5年平均で策定する場合は、それらの値を用いて5年平均を算出すればよいと考えます。

(3) 配当の可能性

3点目の着眼点は配当への期待です。
一般勘定のリターンは予定利率と配当率から構成されます。
原理原則としては「予定利率保証後の剰余金のうち、今後の予定利率保証に必要な額(リスクバッファー)を留保した後の残額が配当として還元される」ことになります。

予定利率が低いほどその保証に必要なリスクバッファーが少なくて済むはずなので「低予定利率、高配当率」となり、リターン合計では低予定利率の会社が高予定利率の会社を凌駕するはずです。
しかし、実際には予定利率が最も低い第一生命は、2023年度まで「予定利率+配当率」も5社間で最低の水準でした
また、予定利率が最も高い富国生命は配当にも積極的です。
これらの実態を踏まえると、配当還元にあたっては各社の配当政策が大きく反映していることが分かります。

したがって、配当の可能性を評価するためには、配当還元の考え方や算定式などを吟味すると同時に、その背景にある配当政策も評価することが望まれます。
なお、時価ベースの剰余ではなく簿価ベースの剰余を配当のベースとしている生保会社もありますが、この考え方では剰余金の水準を恣意的に操作することが可能となります。
これは区分経理の仕組みを理解していないか、あるいは顧客に対する誠実性に欠けると評価せざるを得ません。
したがって、そのような考え方を採用している生保会社の一般勘定の採用は勧められません。

(4)以降の着眼点については、次回の投稿でコメントをする積りです。