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生保会社の2024年上期決算状況① ~ 健全性はあまり変化せず

主な生命保険会社の2024年4~9月期決算結果が先月中に出揃いました。
今日から何回かに分けて、上期決算結果の概要を確認してみようと思います。
今回は各社の健全性指標の状況を確認してみます。

2025年に予定されている新ソルベンシー規制導入までは、現行のソルベンシー・マージン比率と実質純資産(および含み益)が、生保会社の健全性指標になります。
最初にソルベンシーマージン比率の状況を見てみましょう。

大手生保(4社)・中堅生保(5社)のソルベンシーマージン比率の状況

(出所)各社の公表資料より作成

上の表は、大手生保(4社)および中堅生保(5社)のソルベンシーマージン比率をまとめたものです。

まず、2024年上期末のソルベンシーマージン比率は、各社とも健全性の目安とされる200%を大きく超過しています。
最も低い太陽生命でも700%を超える水準を維持していますので、現行規制を前提にすると概ね健全性には問題がないと言えます。

一方で、ソルベンシーマージン総額について2023年度末と2024年9月末を比較すると、大手生保・中堅生保の全社で減少しています。
この理由は、「国内株価の下落と円高により株式含み益および外国証券含み益が減少した」ためと推測されます。
 10年国債利回り   年度始 0.725%   →  上半期末 0.850%
 日経平均株価    年度始 40,369 円  →  上半期末 37,919 円
 円/ドルレート   年度始 151.41 円  →  上半期末 142.73 円
 円/ユーロレート  年度始 163.24 円  →  上半期末 159.43

なお、明治安田生命は上で述べた事情にも関わらず、ソルベンシーマージン比率が改善しています。
これは、2024年9月に「米ドル建劣後特約付社債 17.5億米ドル(約2,500億円)」を調達したことによる効果だと思われます。
劣後債の発行条件は「発行から当初10年間は年5.8%の固定金利とし、11年目以降は5年ごとに金利を見直すか繰り上げ償還ができる」というものす。

この上半期に資本を調達する動きは、他生保でも見られました。
これらは2025年度からの新ソルベンシー規制導入をにらんだものと思われます。
●日本生命 4月に米ドル建て劣後社債を13.2億ドル(約2,000億円)調達
●住友生命 6月に円建て永久劣後債を1,000億円調達

生保会社の健全性を見るための指標としては、ソルベンシーマージン比率の他に実質純資産 があります。

実質純資産とは、時価ベースの総資産から実質的な負債を差し引いたものを指します。
例えば、劣後債のような負債性資本調達手段とされるものは、ソルベンシーマージン比率の算定上はマージンに含めますが、実質純資産には含まれません。
実質純資産がマイナスになると、ソルベンシーマージン比率のレベルに関わらず、金融庁による業務停止命令等の対象になることがあります。

大手生保(4社)・中堅生保(5社)の実質純資産の状況

(出所)各社の公表資料より作成

上の表は2024年上期末の実質純資産とその構成要素である有価証券含み益をまとめたものです。
ご覧のように2023年度末と比較して実質純資産は全社で減少しています。
また、その要因をみると公社債含み損益と株式含み益が全社とも大きく減少しています。

株式含み益の減少は株価の下落によるものであり、公社債含み損益の減少は言うまでもなく国内金利の上昇の影響です。
今後も国内金利は上昇する可能性が高いと考えられますので、それが生保会社の健全性指標にどのような影響を与えるかを注視する必要があります。

最後に2025年度から導入予定の新ソルベンシー規制に基づく健全性指標を確認してみましょう。

大手生保(4社)の連結ESRの状況

上の表は、大手生保(4社)の連結ベースのESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)を、現行ベースの連結ソルベンシーマージン比率と比較したものです。

まず、2024年上期末のESRは、全生保グループで新規制における基準値(健全性の目安)である100%を超えています。
新ソルベンシー規制でも健全性には概ね問題がない状況と言えます。

次に、現行の連結ソルベンシーマージン比率を1/2した水準と比較しても、新規制のESRは低い水準となっています。
これは、
㋐新規制では負債を時価評価することによりソルベンシーマージンが減少すること
㋑新規制では負債側にも金利変動リスクが発生すること
㋒現行のソルベンシーマージン比率算出に用いるリスク係数は 95%VaR を基に設定されているのに対し、ESR では99.5%VaR が基準となること
等の影響と思われます(下の二つの図をご覧ください)。

経済価値ベースのソルベンシー規制 ~ 現行との比較

現行の責任準備金」と「負債の経済価値」~ 算出方法の比較