望ましい年金ガバナンスが備えるべき要件を整理したものとして、OECDの「年金ガバナンスガイドライン」があります。
このガイドラインは 2002 年 7 月に制定され、2009 年に改訂されています。
また、その目的は「私的年金基金のガバナンスの規制について、各国の監督当局に対するガイダンスを提供する」こととされています。
OECDの文書は、ガイドラインの本文と詳細な注釈(ANNOTATIONS)から構成されています。
ここではガイドラインの本文を翻訳したものをご紹介します。
上の表にあるように、ガイドラインは大きく「ガバナンス構造」と「ガバナンスの仕組み」の二つに分けられていて、全体で11項目から構成されています。
ガイドラインで示されている要件のうち、特に重要と思われる点を箇条書きにしてみましょう。
①年金基金のガバナンスにおいては、執行責任と監督責任を分離すべきである。
②すべての年金基金は統治機関を設けるべきである。
③統治機関は加入者・受給者・所管当局等に対する説明責任を負う。
④統治機関のメンバーは、最低限の適合性基準に従うべきである。また、統治機関全体としては、年金基金を監督するために必要なスキルと知識を有するべきである。
⑤統治機関は、内部スタッフや外部サービス提供者に権限委譲ができる。統治機関の責務を果たすために必要な専門的能力を欠いている場合には、専門家の助言を求めることができる。
⑥適切な内部統制が実施されるべきである。
⑦年金基金のガバナンスに関わるすべての個人と法人間に報告チャネルが設定されるべきである。
⑧統治機関は、すべての関係者に対し、適切な情報を明瞭・正確かつ迅速に開示するべ きである。
これらのうち、わが国の年金基金・制度の形態に慣れている年金関係者から見て特に分かり難いのは、「監督と執行の分離」の考え方だと思います。
この点については、次回に考えてみます。