先日投稿した生保会社の健全性に関する記事についてご質問を頂きました。
「上半期は大幅な円安だったのに、生保会社の外債含み益が減少したのはなぜか?」というご質問です。
確かに上期の円ドルレートは大幅な円安でした。
ある生保会社の上期決算資料によると、
・3月末の円ドルレート 122.39
・9月末の円ドルレート 144.81
ですから、割り算すると約18%円安に振れています。
金利上昇がなかったとすれば、外債の時価は大幅に膨らんでいたはずです。
一方で、米国金利上昇がどの程度だったかというと、
・3月末の米国10年国債利回り 2.34%
・9月末の米国10年国債利回り 3.83%
と、約1.5%金利が上昇しています。
仮に外債の平均デュレーションが10年だとすれば、時価は15%程度減少したはずです。
生保会社の上期決算資料を用いて外債時価の半期での減少幅を、期中での売買も考慮して概算すると、だいたいマイナス6%~7%になります。
すなわち、為替の影響をプラス18%とすると、ドルベースでの時価変動は概ねマイナス24%~25%程度と推測されます
金利上昇幅は年限に関係ないと仮定すると、24%÷1.5% で、実際の平均デュレーションは16年程度と推測されますね。
実際には国債以外にも社債の影響もあるはずですし、ドル以外の外債も保有しているはずですが、ざっくりと計算すると上のような感じになります。
生保会社は内外債券とも20年債、30年債などの長期の債券を持っていますので、上で行った概算結果(平均デュレーションは16年程度)にはそれほど違和感がないと思います。
さて、ここで言えることは、「今年度の上期決算時に円安が進んでいなかったら、生保の健全性指標(ソルベンシーマージン比率と実質純資産)は、さらに悪化していたはず」だということです。
この前に投稿した記事で書いたように、今年の上期で生保の健全性指標は大きく悪化しました。
その最大の要因は外債の含み益の減少です。
しかし、実際には円安でかなり救われたということです。
円安が進んでいなかったらば、さらに厳しい状況になっていた可能性があります。