主な生命保険会社の2022年4~9月期決算資料が先週までに公表されています。
前に書いたように、生保一般勘定に投資する際の最大の留意点は、生保の破綻リスクです。
リスク管理のためには、生保会社の健全性指標を定期的に確認することが大事です。
以下では、9月末の各社の健全性指標の状況を確認してみます。
2025年に予定されている新ソルベンシー規制導入までは、現行のソルベンシーマージン比率と実質純資産(および含み益)が、生保会社の健全性指標になります。
最初にソルベンシーマージン比率の状況を見てみましょう。
以下の表は、団体年金向け一般勘定商品を提供している主要生保会社の、2022年9月末のソルベンシーマージン比率をまとめたものです。
上段の2022年9月末のソルベンシーマージン比率は、各社とも健全性の目安とされる200%を大きく超過していることが分かります。
最も低い住友生命でも652%ですから、現行規制を前提にすると、概ね健全性には問題がないと言えそうです。
一方で、2021年度末と比較すると、各社ともソルベンシーマージン比率は大きく悪化しています。
また、その主たる要因はソルベンシーマージン総額の減少です。
これは、ソルベンシーマージンの構成要素である「その他有価証券の含み益」の減少が影響したものと思われます。
海外金利の上昇と株価の下落により外国証券含み益と株式含み益が減少したことが、ソルベンシーマージン総額の減少の主たる要因と思われます。
生保会社の健全性を見るための指標としては、ソルベンシーマージン比率の他に実質純資産 があります。
実質純資産とは、時価ベースの総資産から実質的な負債を差し引いたものを指します。
例えば、劣後債のような負債性資本調達手段とされるものは、ソルベンシーマージン比率の算定上はマージンに含めますが、実質純資産には含まれません。
実質純資産がマイナスになると、ソルベンシーマージン比率のレベルに関わらず、金融庁による業務停止命令等の対象になることがあります。
上の表は2022年9月末の実質純資産とその構成要素である有価証券含み益をまとめたものです(なお、日本生命は単体での実質純資産を開示していません)。
ご覧のように、2021年度末と比較して実質純資産と有価証券含み益は、各社とも大きく減少しています。
これらは内外金利の上昇と株価の下落の影響によるものです。
各社別に見ると、住友生命の実質純資産の減少度合いが大きいことが分かります。
一般勘定資産に対する実質純資産の比率は11.6%まで落ち込みました。
これは住友生命のポートフォリオが影響しています。
住友生命のポートフォリオは、他の大手生保と比較して株式の割合が低く、外国公社債の割合が大きいという特徴があります。
そのために住友生命の場合は、上期の海外金利の急上昇の影響が大きかったものと思われます。
今後も内外金利は上昇する可能性があります。
生保一般勘定を採用している投資家は、「金利上昇が生保会社の健全性指標にどのような影響を与えるか」を注視する必要があると考えます。