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企業年金個人年金部会の再開 ~ 資産所得倍増プランへの対応

11/14に社会保障審議会個人年金部会が開催されました。
資料2は「私的年金制度(企業年金・個人年金)の今後の課題」と題されたものです。
この資料をざっと見たところ、当面のテーマは「iDeCoの加入年齢範囲の拡大」のようです。

言うまでもなく、これは6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を踏まえたものです。

(出所)新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画

上に引用したように、この計画では「貯蓄から投資」を実現するために、「NISAの抜本的拡充」および「iDeCo制度の改革」がテーマとして掲げられ、それらを含めた「資産所得倍増プラン」を本年末までに策定する、と宣言されています。

もう11月も後半ですから、時間はあまりないですね。
企業年金個人年金部会でも、このテーマの議論を急ぐのだろうと思われます。

なお、すでに金融庁は8月の税制改正要望に、「NISAの抜本的拡充」を盛り込んでいます。
また、2022事務年度の金融行政方針でも、「資産所得倍増プラン」への対応をテーマとして挙げています。

NISAの拡充やiDeCoの加入範囲の拡大が実現することは、資産形成手段が広がる訳ですから、国民にとっては望ましいことです。
しかし、そのような制度改正で「貯蓄から投資」が本当に実現するかどうかについては、私は疑問に思っています。

実際、NISAやiDeCoについては税制面のメリットは強調されていますが、投資を行うことの魅力は十分には語られていないのではないでしょうか?
貯蓄に比べて投資の方が有利かつ魅力的であれば、仮に税のメリットが不十分でも投資への資金シフトが進むはずです。

私自身はそのように考えており、NISAももちろん利用していますが、その外枠でも投資信託への積立投資を(金額はささやかですが)継続的に行っています。
ただ、私も国内株には魅力を感じないので、投資はしていません。
全額を外国株式のインデックスファンドに充てています。

(出所)auカブコム証券のHP

上のグラフを見れば日本株に投資する気持ちはなくなりますね。
失われた30年と言われるように。わが国経済の成長が停滞していることが、日本の株価にも反映していると言えます。

「貯蓄から投資」という表現には引っかかるものがあります。
その背景に「貯蓄過剰で投資が十分に行われないことが、日本経済低迷の原因」という考え方があるように感ずるからです。

しかし、これは本末転倒ではないでしょうか?
経済が停滞しているために株価も上昇せず、国内株への投資には魅力がない。
そのために「貯蓄から投資」が進まないというのが現実です。

制度面を手当てすることも有意義かもしれませんが、それよりも経済成長が実現することの方が、「貯蓄から投資」の観点では、はるかに効果があるはずです。
岸田内閣には、労働市場の規制緩和を始めとした成長戦略を、強力に進めてもらいたいと考えます。