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年金改革の議論 ~ 第1回社会保障審議会年金部会(10/25)

本日、第1回社会保障審議会年金部会が開催されました。
2年後の2024年に、5年に一度の公的年金財政検証が行われますので、それに向けて公的年金の制度改正等の議論が行われることになると思います。

資料は、厚労省のHPにアップロードされています
資料2の35ページ以降に「今後の検討課題」がまとめられています。
主な課題を箇条書きにすると、
①被用者保険の適用拡大
②高齢期の就労と年金受給のあり方
③年金制度の所得再分配機能の維持
となります。

これらのテーマのうち、①・②はすでに2019年の財政検証時に議論されていたものです(下図参照)。

(出所)第10 回社会保障審議会年金部会資料(2019 年9 月27 日)

上の図の右上に記載されているように、所得代替率の低下を抑制する方策として「A.被用者保険の更なる適用拡大」「B 保険料の拠出期間の延長と受給開始時期の選択肢の拡大」が挙げられています。

一方、上記の「③年金制度の所得再分配機能の維持」は、今回、新しく提示されたテーマになります。

「給付水準調整(マクロ経済スライド)の影響で、定額の基礎年金の水準が大きく低下する一方で、報酬比例の厚生年金の水準低下は小幅にとどまる」ことにより、「公的年金の所得再分配機能が低下する」ことを問題視している訳です(所得再分配機能については以下の図を参照)。

(出所)第1 回社会保障審議会年金部会資料(2022 年10 月25 日)

この問題意識は、自営業者のような国民年金加入者ではなく、むしろ厚生年金加入者(サラリーマン)間の所得再分配を対象にしたもののように思えます。

前回の財政検証時(2019年)に議論された、「基礎年金水準の低下に対する方策としての短時間労働者等の適用拡大」のロジックは、
①短時間労働者等の自営業者でないにもかかわらず国民年金に加入している人が、国民年金から抜けて厚生年金に移る
②その際、積立金は移管しないので、結果的に国民年金財政が改善する。
③②の効果で国民年金(基礎年金)の水準低下を抑制する
と、第1号被保険者(自営業者)の年金水準に焦点を当てたものでした(下図参照)。

(出所)第10 回社会保障審議会年金部会資料(2019 年9 月27 日)

今回提示された問題意識は、上の問題意識とは少し違うように思います。

基礎年金の水準が大きく低下する一方で、厚生年金(報酬比例部分)の水準低下が小幅であることにより、
①厚生年金加入者(サラリーマン)のうち、厚生年金(報酬比例部分)の受給額が小さく、総年金額に占める基礎年金の割合が高い人、すなわち平均給与水準が相対的に低い人は、年金額合計の低下幅が大きくなる。
②それに対し、厚生年金(報酬比例部分)の受給額が大きく、年金合計に占める基礎年金の割合が小さい人、すなわち平均給与水準が相対的に高い人は、年金額合計の低下幅が小さくなる。
という点を、「所得再分配機能の低下」という表現を用いて問題視しているように思われます。

この問題は、厚生年金(報酬比例部分)の財源を基礎年金に投入することで改善しますね。
それが、以前に触れた「国民年金(基礎年金)と厚生年金の給付水準調整(マクロ経済スライド)期間を揃える」という議論に繋がってくるのだと思われます。