生保一般勘定への新規資金の受け入れを、生保会社は長期に亘り止めていました。
これは予定利率が1.25%の新規資金を受け入れても、超低金利下ではそのコストに見合った資産運用ができないからです。
当然の判断だと言えます。
しかし、第一生命と日本生命は予定利率引下げと同時に新規資金受け入れを再開しました。第一生命の0.25%、日本生命の0.5%というコストならば、「今の低金利下であっても採算がとれる」と判断したのだと思われます。
実際、財務省のサイトで金利情報を確認すると、昨日(10/4)時点で10年国債金利が0.249%、20年国債が0.957%となっています。
生保会社にとっても利ザヤを確保可能な水準だと言えます。
一方、年金基金や企業年金にとっては、なかなか難しい判断になります。
一般勘定も手数料がありますから、実質的な利率は予定利率を下回ります。
第一生命の手数料率は0.15%ですから、実質的な予定利率は0.1%です。また、日本生命の手数料率は0.2%ですから、実質的な予定利率は0.3%となります。
国内債券の期待リターンと比較しても微妙な水準ですね。この水準では魅力的とは言い難いと思います。
しかし、私自身は「生保一般勘定への新規預入れは、十分に魅力的」と考えます。
そう考える最大の理由は「予定利率に加えて配当が期待できる」からです。
実際、第一生命は2021年度決算で0.75%の配当を出しました。予定利率、手数料率、配当率を合計すると、0.9%になります。
長期金利と比較しても十分に魅力的な水準です。
「配当を今後も期待できるのか?」という疑問が生じると思いますが、私は「今後も配当は十分に期待できる」と考えます。
少なくとも、大手3生保会社の団体年金資産の収益力(特にインカム収益力)は十分に高く、今後もおおむね維持されます。
私がシミュレーションをしてみたところ、生保会社が保有する円建債券の利回りは緩やかに減少する可能性が高いです。
しかし、他の資産(株式、不動産、外国債券など)のインカム利回りは簡単には下がりません。
それらを合計した団体年金資産全体のインカム収益力は、今後も高い水準を維持する可能性が高いという結果になりました。
予定利率が下がったとしても、配当による上乗せを考慮すれば、(金利が急上昇しない限り)長期金利を超える利回りが今後も期待できると考えます。
生保一般勘定には、金利上昇時の価格下落リスクが存在しないという大きなメリットがあります。
このメリットは予定利率引下げ後も維持されます。
それに加えて長期金利を上回るリターンが期待できる訳ですから、年金基金や企業年金にとっては「新規預け入れを前向きに検討できる資産」だと考えます。