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マーケットの変動と生保一般勘定

2022年に入ってからマーケットが大きく変動しています。
米国の金利上昇に端を発した株価下落により、ドルベースでは債券市場も株式市場も大幅なマイナスを記録しています。
外国株式および外国債券の年初からの下落率は20%を超えています。

円ベースでは円安の効果で、これほど悪いリターンではないですが、いつ円安が修正されるかわかりませんね。
企業年金にとっては今後の行方が気がかりなことだと思います。

生保一般勘定がその価値を発揮するのは、まさに今年のような年ですね。
どんなにマーケットが下落しても予定利率は保証されます。
(ただし、配当が出ない可能性はあります。)

実際、リーマンショックのあった2008年度も、各社は予定利率を保証しました。
日本生命はさらに0.13%の配当も上乗せしました。
金利上昇に伴う評価損もありません。

しかし、生保はなぜそのようなことが可能なのでしょうか?

最も大きな理由はリスクバッファーの存在です。
運用資産の価格変動リスクが顕在化したときのために、生保会社はリスクバッファーを積んでいます。

リスクバッファーには株式含み益のようなオフバランスのものと、価格変動準備金や危険準備金のようなオンバランスのものがあります。
価格変動リスクが顕在化して多額の売却損や評価損が発生した場合には、これらのリスクバッファーを取崩して対応します(決算での剰余を確保します)。

企業年金でも、財政悪化リスク相当額の積立が可能になっていますが、生保会社のリスクバッファーも似たような性格を持っています。
仮に、リスクバッファーでも対応できないような損失が発生した場合には、ソルベンシー不足ということで業務継続ができなくなる可能性があります。

言い換えれば、生保会社はリスクバッファーで対応可能な範囲でリスクをとっています。
それを超えたリスクは、(今の生保会社はリスク管理を適切に行っているので)とりません。
バブルのころはリスク管理が不十分な会社も多かったので、バブル崩壊後には多数の生保会社が破綻しました。

さて、団体年金向け生保一般勘定に戻ると、顧客の立場からは「団体年金資産のリスクバッファーがどの程度あるか?」を確認することが重要だと言えます。
マーケットの変動があっても吸収可能なリスクバッファーがあれば、予定利率保証が継続される可能性が高くなります。
つまり、同じ予定利率であれば、リスクバッファーの厚い生保会社に資金を預けた方が安心だと言えます。

しかし、この点については、生保会社のディスクロは不十分です。
一般勘定全体のリスクバッファーやソルベンシーマージン比率は開示されていますが、「団体年金資産に対応するリスクバッファーの水準やリスク量との関係」についての情報開示は不十分です。
今後、改善されることを期待したいと思います。