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個人保険の予定利率は引下げないのか?

日本生命が生保一般勘定の予定利率引下げを公表した後は、複数の企業年金顧客とその内容や影響および対応についてディスカッションを行いました。
その際に、ある顧客から「個人保険の予定利率は下げないのか?」と訊かれました。

これは非常にもっともな疑問です。
企業年金向け一般勘定商品の予定利率を下げた日本生命や第一生命も、個人保険の予定利率を下げることはしていません。

報道等で「個人保険や個人年金の予定利率引下げ」を目にすることがありますが、あれはあくまで新規契約の予定利率の引下げです。
個人保険や個人年金の契約期間は非常に長いので、過去の何十年も前に加入した契約も当然ながら今でも残っています。

バブル期であれば個人保険や個人年金の予定利率が5.5%という契約もありました。そういう契約が今でも残っていて、毎月、保険料が生保会社に払い込まれています。それらの保険料に対する予定利率は、今でも5.5%のままです。
そのため生保会社負債の平均予定利率はなかなか下がりません。
前に書いたように、例えば明治安田生命の平均予定利率は2021年度末で1.73%となっています。

一般勘定の予定利率を下げられた企業年金にとっては、何とも納得しがたいことだと思います。

過去に契約した個人保険の予定利率を引下げることは、法律的には可能となっています。生保会社の経営が厳しかった2000年代初頭に金融庁で議論され、2003年の7月の国会で保険業法の改正が行われています

しかし、この法律を利用して既存契約の予定利率を下げた生保会社はありません。
その理由は、下げなくても経営には問題がないからです。
生保会社のインカム利回りは今でも高いですから、過去の契約で予定利率が高い契約が残っていても、会社全体では逆ざやにはなっていません。
むしろ、最近の生保は、円安による外債クーポンの増加や、株式配当の増加等により利差益(大雑把に言えば、利息配当金収入と予定利息の差のことです)が増加傾向にあります。

この事実を企業年金向け一般勘定の引下げとの関連で捉えれば、一般勘定の予定利率(保証利率)が引き下げられても、(生保会社の収益力は依然として高いですから)配当は今後も期待できるということになります。
生保会社の決算報告を確認する際には、「生保会社の収益(特にインカム収益)が適切に契約者に還元されているかどうか」を確認することが、今後は特に重要になると考えます。