多くの企業年金関係者は、日本生命や第一生命が行った「生保一般勘定の予定利率引下げ」の背景には長引く超低金利があると考えているようです。
イメージで言うと「生保資産の利回りが1%を下回ることになりそうなので、団体年金の1.25%の予定利率には耐えられない。だから予定利率を下げざるを得ないのだろう」と解釈している方が多いと思います。
こういう見方は正しいのでしょうか?
実際には生保会社資産の利回りははるかに高い水準を維持しています。
例えば、明治安田生命の2022年統合報告書をみると、「基礎利益上の運用収支等の利回り」が開示されています。生保会社で使用している用語は分かり難いものが多く、この「基礎利益上の運用収支等の利回り」についても、生保業界の人以外には意味が良く分からないと思います。「簡単にいうと、利息配当金収入を中心としたインカム収益の利回りにほぼ相当する」とお考えになっていただいて、問題ありません。
さて、この利回りの2021年度実績は明治安田生命の場合は、2.87%となっています。それに対し平均予定利率は1.73%であり、いわゆる逆ざやにはなっていません。なお、これらの数字は団体年金分だけではなく、個人保険や個人年金も含めた一般勘定全体のものです。
この資料からわかることは以下の2点です。
①一般勘定全体のインカム利回りは、団体年金の予定利率の1.25%をはるかに上回っている。
②一般勘定全体の平均予定利率は、団体年金の予定利率の1.25%を大きく上回っている。
日本生命や第一生命は上記の数値は開示していませんが、上の①②は明治安田生命と同じ状況にあると思われます。
生保会社の平均予定利率は1.25%を超えていますが、資産のインカム利回りはそれをはるかに超えているので、経営上は問題ありません。むしろ生保会社の基礎利益は過去最高水準に近い状況です。
依然としてこのような収益力があるのに、なぜ団体年金の予定利率を下げるのでしょうか?
少なくとも低金利が主たる要因でないことは、明らかだと思います。