以前の記事で書いたように、企業年金が生保一般勘定の採用を検討する際の定量的な評価ポイントは、「(区分経理上の)団体年金区分の収益力と財政状況を確認すること」と言えます。
これらの点を企業年金が評価するためには、各生保会社の団体年金区分の財務情報を基にして
①安定的な収益力を、インカム利回りを用いて評価する。
②リスク顕在時の対応力を、リスクバッファーの水準を用いて評価する。
ことが必要になります。
私は以前に、証券会社で年金基金向けの資産運用コンサルティングを担当していました。
そのような仕事の関係で、当時は「生保会社が顧客に提供している団体年金区分の決算情報等」を入手することもできましたし、それらの情報を用いて生保各社のインカム収益力やリスクバッファーの比較情報を顧客に提供することもできました。
しかし、残念ながら今の立場では、生保会社の団体年金区分について、上記の2点を評価することは難しいです。
その理由は「団体年金区分の財政状況に関して、生保各社が公開している情報が少なすぎる」からです。
一般勘定全体についての公開情報などを基にして、何とか工夫できないかと考えてみましたが、やはり企業年金の参考になる情報を作るのは困難です。
それでも、生保会社が企業年金に提供している情報があれば、アドバイスをご提供することは可能ですので、ご関心のあるお客様は個別にご照会いただければと思います。
さて、そこで今回の記事では、少し視点を変えて「生保会社の顧客への還元姿勢」についての、私の感想を書いてみようと思います。
私が企業年金向けに運用コンサルティングを行っていたころは、当然ながら生保会社の団体年金担当者とのコミュニケ―ションもありました。
団体年金の営業担当者が相手方の場合もありますし、団体年金事業の企画部門の方との接点もありました。
その人たちとのコミュニケーションを通じて感じていたのは「各社によって契約者への還元姿勢にずいぶん差がある」ということです。
大きく分けて、還元姿勢は以下の3つのパターンに分けられるというのが、当時の私の印象です。
①「剰余金を契約者に還元するのは当然であるから、(会社の)健全性の確保と契約者への還元を両立させたい。企業年金の役にたつように、何とか還元方法を工夫したい」と考えている生保
②「契約者への還元よりも重要なのは株主への還元である。株主に説明できないような契約者還元は行えない」と考えている会社
③「一般勘定で保証利率を提供しているだけで、契約者へは十分に付加価値を提供している。上乗せ部分の還元はできるだけ抑えたい」と考えている生保
企業年金にとって重要なのは、①のような還元姿勢をとっている生保会社を選ぶことです。
単年度の配当水準だけに注意を向けるのではなく、その背景にある「契約者に対する還元姿勢や契約者配当についての考え方」をよく確認することが重要だと考えます。