生保会社の2023年上期決算概要の3回目です。
今回は業績指標である新契約年換算保険料の状況を確認してみます。
大手生保(4社)の新契約年換算保険料の実績
上のグラフは大手生保(4社)の新契約年換算保険料の実績(金額、対前年上期増加率)をグラフにしたものです。
主なポイントは以下の通りです。
①個人保険・個人年金合計の新契約年換算保険料を2022年度上半期と比較すると、日本は増加、第一・明治安田・住友は減少となりました。
②明治安田の新契約年換算保険料が減少した主要因は、「外貨建て一時払い商品の販売減少」です。
また、住友は「平準払い貯蓄性商品の販売減少」の影響がありました。
第一生命は営業職員チャネルでの販売減少が続いています。
③日本生命は「円建て一時払い終身保険」の予定利率を2022年1月に15年半ぶりに引き上げました(0.25% → 0.60%)。
新契約業績が好調な要因の一つだと推測されます。
中堅生保(5社)の新契約年換算保険料の実績
上のグラフは中堅生保(5社)の新契約年換算保険料の実績(金額、対前年上期増加率)をグラフにしたものです。
主なポイントを挙げてみます。
①個人保険・個人年金合計の新契約年換算保険料は、太陽・朝日を除き対前年で増加しています。
②朝日の新契約が減少したのは、2021年4月になないろ生命を開業し、代理店販売等の機能を新会社に移転したためです。
なないろ生命との合算でみると、2023年度上期の新契約年換算保険料は対前年で9.6%増加しています。
③中堅生保の中では、大同生命の新契約業績が突出して高くなっています。
特に、2022年上期、2023年上期は大手の第一生命を超える水準となっています。
コロナ禍前からの新契約年換算保険料の推移
上の表はコロナ禍前の2019年上期からの新契約年換算保険料の推移を見たものです。
右側の「対19年上期増加率」の欄を確認すると、大手4社では日本と明治安田が19年度の水準を超えていることがわかります。
それに対して、第一・住友は新契約年換算保険料が減少しています。
特に、第一生命は48%の減少と、新契約実績が2019年度上期の約半分となっており、大手では断トツの最下位です。
また、中堅の大同にも大きな差をつけられています。
第一生命の業績低迷の要因は、「2020年に発覚した営業職員による巨額金銭詐取事件」であることは間違いないでしょう。
それにしても、いつになったら低迷を脱することができるのでしょうか?
第一生命は規模が大きく固定費水準も高いので、最近の新契約実績では採算割れ(コストを賄えない)になっている可能性があります。
先日に、日経の報道で「第一生命、新契約が「採算割れ」 開示訂正で際立つ苦境」という記事がありました。
新契約価値(新契約EV)が、マイナスに転落したという内容です。
これも、「巨額のコストを賄えるだけの新契約業績が上がっていない」ことが理由と思われます。
第一生命の経営者が今後にどのような手を打つかが注目されますね。
一方、中堅5社では、太陽と大樹を除く各社が19年上期水準を回復しています。
特に、大同生命は19年度と比較して約80%も増加しています。
また、朝日生命もなないろ生命との合算でみると、対19年上期で52.5%の増加となっています。
なないろ生命の分社化後は、好調な実績が続いているようです。