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生保会社の2022年度決算状況① ~ 健全性指標は悪化

主な生命保険会社の2022年度決算結果が先月中に出揃いました。
今日から何回かに分けて、決算結果の概要を確認してみようと思います。
今回は健全性指標の状況を確認してみます。

2025年に予定されている新ソルベンシー規制導入までは、現行のソルベンシー・マージン比率と実質純資産(および含み益)が、生保会社の健全性指標になります。
最初にソルベンシーマージン比率の状況を見てみましょう。

大手生保(4社)・中堅生保(5社)のソルベンシーマージン比率の状況

(出所)各社の公表資料より作成

上の表は、大手生保(4社)および中堅生保(5社)のソルベンシーマージン比率をまとめたものです。

まず、2022年度末のソルベンシーマージン比率は、各社とも健全性の目安とされる200%を大きく超過しています。
最も低い太陽生命でも600%弱の水準を維持していますので、現行規制を前提にすると概ね健全性には問題がないと言えます。

一方で、住友生命を除く各社においては、2022年度末のソルベンシーマージン比率が2021年度末よりも低下しています。
特に低下幅が大きいのは、太陽生命と大樹生命です。

その要因を見るために、ソルベンシーマージン比率の構成要素であるリスク量とソルベンシーマージン総額の推移に着目すると、全社でソルベンシーマージン総額が減少していることが分かります。
これは、ソルベンシーマージン総額の構成要素である「その他有価証券の含み益」が海外金利の上昇や株価の下落により減少したことが主要因と思われます。

なお、住友生命は、2022年度上期末ではソルベンシーマージン比率が2021年度末から大きく低下していました。
しかし、2022年度末では若干の増加に転じています。
2022年度上期末と年度末を比較すると資産運用リスク量が大幅に減少していますので、外国証券を売却することでリスクを減少させたものと推測されます(下のグラフを参照)。

(出所)住友生命の公表資料より作成

生保会社の健全性を見るための指標としては、ソルベンシーマージン比率の他に実質純資産 があります。

実質純資産とは、時価ベースの総資産から実質的な負債を差し引いたものを指します。
例えば、劣後債のような負債性資本調達手段とされるものは、ソルベンシーマージン比率の算定上はマージンに含めますが、実質純資産には含まれません。
実質純資産がマイナスになると、ソルベンシーマージン比率のレベルに関わらず、金融庁による業務停止命令等の対象になることがあります。

大手生保(4社)・中堅生保(5社)の実質純資産の状況

(出所)各社の公表資料より作成

上の表は2022年度末の実質純資産とその構成要素である有価証券含み益をまとめたものです。
ご覧のように、2021年度末と比較して実質純資産と有価証券含み益は、各社とも減少しています。
これらは内外金利の上昇と株価の下落の影響によるものです。

今後も内外金利は上昇する可能性がありますので、それが生保会社の健全性指標にどのような影響を与えるかを注視する必要があると考えます。


最後に2025年度から導入予定の新ソルベンシー規制に基づく健全性指標を確認してみましょう。

大手生保(4社)のESRの状況

上の表は、大手生保(4社)の連結ベースのESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)を現行ベースの連結ソルベンシーマージン比率と比較したものです。

ソルベンシーマージン比率は金利上昇等の影響により2021年度から減少していますが、ESRには大きな変動は見られません。
現行規制では金利が上昇しても負債は変動しないのに対して、新規制では金利上昇により負債額が減少するためです(下図参照 )。

(出所)住友生命の決算説明資料