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【速報】生保一般勘定 ~ 2022年度決算に基づく配当率

主要な生命保険会社の決算発表が5月中旬から始まっています。
そこで今回は、企業年金向け生保一般勘定商品の2022年度配当率を確認してみます。

生保各社の2022年度一般勘定(団体年金区分)配当率

(出所)各社の決算資料より作成

上の表の最下段が、2022年度決算に基づく配当率です。
主なポイントを箇条書にしてみましょう。

①日本生命の既契約については、2023年4月1日から予定利率が0.50%に引下げられます。2022年度の予定利率は1.25%でしたが、上乗せの配当率はゼロとなりました。
また、日本生命は、2022年4月からの新規契約は予定利率が0.50%の新商品(「ニッセイ一般勘定プラス」)で受託しています。
その商品に対する配当率は0.70%となります(「予定利率+配当率」は1.20%)。

②第一生命の一般勘定は予定利率が0.25%まで引下げ済みです。
配当率は0.69%と前年度から減配となりました。

③明治安田生命(予定利率1.25%)の配当率は前年度に引き続き配当率はゼロです。

④住友生命(予定利率1.25%)の配当率はゼロと、前年度(0.18%の配当)から減配になりました。

⑤富国生命(予定利率1.30%)の配当率は0.30%と、前年度と同率になりました。

生保一般勘定の「予定利率+配当率」推移(解約控除型)

(出所)各社の決算資料より作成

上のグラフは、生保一般勘定の「予定利率+配当率」の推移を見たものです。
各社とも緩やかに低下傾向にあることが分かります。

また、2022年度は、長期金利と生保一般勘定の利回りの差が縮まりました。
長期金利が上昇した一方で、生保一般勘定の利回りが低下したためです。
今後長期金利がさらに上昇すると、生保一般勘定との利回りの差は一段と縮小するものと思われます。

いち早く予定利率を引下げた第一生命の「予定利率+配当率」を他生保と比較すると、2020年度以降は最下位を続けており、顧客への配当還元を抑制していることが分かります。
他生保との競合上もマイナスに働くと思われますので、今後も抑制的な還元方針を継続するかどうかが注目されます。

年始の予測との比較

私は、今年の年始に「2023年の予測 ~ 生保一般勘定はどうなるか?」という記事を投稿しました。

そこで書いたことを要約すると、以下の3点になります。

①日本生命・第一生命以外の生保会社も、(新ソルベンシー規制が導入される)2025年度までには一般勘定の予定利率引下げに踏み切る。
②ただし、引下げ後の予定利率の水準は0.25%より高くなる。
③2022年度決算の配当率は、第一生命以外はゼロとなる。
また、第一生命の配当率は前年度よりも下がる。

さて、2022年度決算結果を踏まえて、上記の予測のうち③を検証してみましょう。
①と②については、今の時点では検証できません。

③の配当率については、富国生命を除き予想通りの結果となりました。
第一生命の減配は、会社全体として業績(基礎利益)が悪化したことが影響しているものと推測します。
ちなみに、第一生命G全体で基礎利益は、前年度よりも約34%減少しています。
また、第一生命単体で見ると、基礎利益の減少率は約37%となっています。

明治安田生命と住友生命が配当率をゼロとしたのは、今後の予定利率引下げを見据えたものだと考えます。
私が予想しているように「明治安田生命と住友生命が2025年度までに予定利率引下げを行うこと」を前提にすると、2022年度決算で配当を出すことは予定利率引下げと矛盾してしまいます。

言い換えれば「1.25%に配当を上乗せできるほどの収益力があるならば、なぜ予定利率を下げるのか?」という疑問が顧客サイドに生じてしまうので、予定利率引下げの際の顧客説明が難しくなってしまいます。
そういう事態を懸念して、明治安田生命と住友生命は配当をゼロにしたのだと推測しています。

私の予想が外れたのは、富国生命の配当率です。
私は、「富国も予定利率引下げを見据えて、配当をゼロにするだろう」と予想していました。
しかし、上記したように富国は配当率を据え置きました。

富国生命は独自性のある判断をする会社です。
例えば、今の一般勘定の予定利率も1.30%と、他生保よりも高く設定しています。

また、富国生命の米山社長は「2022年版 週刊東洋経済生保・損保特集号」のインタビューで、新ソルベンシー規制に対して懐疑的な意見を表明していました。

世界的に金利が上昇し、わが国の金利も今後の上昇が見込まれる環境を踏まえると、「富国生命は生保一般勘定の予定利率引下げを行わない可能性もある」と、今は考えています。