今回は「DCガバナンスはなぜ重要か」について書いてみます。
DCのガバナンスに取り組む際に最も重要な認識は、「事業主による制度運営が加入者等に効果や影響を及ぼす」ということです。
より具体的には、事業主の行動は加入者の資産あるいは将来の給付額に影響を与えるということです。
これはDBとは決定的に違う点です。
DBの場合は、仮に事業主が不適切な資産運用をして年金財政が悪化しても、その責任としての掛金引上げは事業主の負担になります。
加入者に対してはあくまでも規約に定めた給付が行われます。
給付減額が行われない限り、事業主の不適切な行動が、加入者の給付額に影響を与えることはありません。
しかし、DCの場合は、例えば手数料の高い運用商品や運用成績が長期に亘り見劣りする商品について、その定期的な評価を事業主が怠って商品提示を続けた場合には、その商品を選択した加入者の資産残高に影響します。
他にも、運用商品が多すぎるとか、運営管理機関の評価をしない、投資教育が不十分といった事業主の不適切な行動は、加入者の資産形成に影響します。
それだけ、DCの場合は、事業主の責任が重大だということです。
この点を正しく認識することがDCガバナンスに取り組む際に最も重要な認識だと考えます。
実際、DC先進国かつ訴訟社会の米国では、下のグラフにあるように、DCの受託者の責任を問うための訴訟が増加していますし、和解のための費用も巨額にのぼっています。
なお、DC関連訴訟の実例については、以前にもご紹介しましたので、ご参考にしてください。
米国401(k)に関連する訴訟件数
わが国は米国のような訴訟社会ではありませんから、米国に比べると訴訟リスクは小さいだろうと考えられます。
しかし、訴訟には至らなくとも、今後退職者の増加に伴い、事業主の行動が労使間で問題になる可能性はあるのではと考えています。