公務員の新3階部分(年金払い退職給付)は、事前積立方式で財政運営を行っていますが、前回に書いたように不足金が発生することは極力避けなければなりません。
そのため、民間のキャッシュバランスプランとは異なる制度運営上の工夫が、いくつかなされています。
まず、基準利率の設定です。
法律(国共済法75条、地共済法77条)では、「国債の利回りを基礎として、積立金の運用の状況その他を勘案して設定する」と規定されています。
具体的には、国債の応募者利回りの過去1年平均および過去10年平均の低い方が基準利率となります。
ここまでは民間と同じような考え方です。
しかし、新3階部分の基準利率については「積立金の運用の状況その他を勘案する」と法律で規定されています。
これは何を意味するのでしょうか?
この点について説明した公表資料は少ないのですが、「財政制度等審議会 国家公務員共済組合分科会」の2015年6月の資料が多少参考になります。
上の図表は当該資料からの抜粋で、基準利率の設定方法を述べたものです。
④の一つ目のマルに注目すべき記載があります。
「基準利率は、国債利回りを基礎とするが、国共済又は地共済の運用見通しが国債利回りを下回るときは当該運用見通しを使用。この他、利差損益も反映して設定(簿価)」
つまり、「国債利回りを基に算定した基準利率が運用見通しを上回るときは、運用見通しを基準利率とする」ことになります。
この処置により、「基準利率が運用の見通しを上回る可能性」は、ほとんどなくなります。
キャッシュバランスの剰余不足は、(本質的には)基準利率と運用利回りの差から生じます。
基準利率が運用見通しを上回らないのであれば、不足金が発生する可能性は限りなく小さくなりますね。
なお、新3階部分の積立金運用は、現時点では債券および貸付金でしか行われていません。
また、積立金の評価方法は簿価評価を採用しています。
株式のようなリスク性資産は持っていません。
下の表は、国家公務員共済組合連合会のHPに掲載されている資料の抜粋で、新3階部分の積立金の内訳を示しています。
新3階部分の積立金は、国内債券(財投預託金を含む)と短期資産から構成されていること分かります。
また、積立金額は簿価評価をしていることも示されています。
金利変動による評価損益は計上していません。
このような仕組みで運営することにより、公務員の新3階部分は事前積立方式でありながら不足金発生の可能性を抑えています。
なお、この他にもいくつか工夫がなされていますが、それらについては上で引用した「財政制度等審議会 国家公務員共済組合分科会」の2015年6月の資料をご覧ください。