2015年10月に実施された被用者年金一元化により、公務員の方の年金制度は大きく変わりました。
上の図で示してあるように、1階部分・2階部分は公務員も民間のサラリーマンも同じ制度となりました。
また、民間の企業年金に相当する3階部分の年金制度として「年金払い退職給付」と呼ばれる制度が新設されました。
この制度は、略称として「新3階部分」とか「新職域部分」とかで呼ばれることが多いです。
年金払い退職給付は、企業年金のキャッシュバランスプランに良く似た制度です。
しかし、異なる部分もありますので、今日は「何が違うのか」を解説してみたいと思います。
まず、「年金払い退職給付」の仕組み図をみてみましょう。
制度の仕組みは以下の通りです。
①毎月の標準報酬に一定の付与率を掛けたものを付与額とします。
②また、付与額累計に対しては基準利率で利子分が上乗せになります。
③付与額と利子分を累計した額が給付算定基礎額となり、それを基に退職後の年金給付が行われます。
また、財政方式は事前積立方式であり、掛金率は収支相当の原則で定められます。
財政再計算は5年ごとに行われることになっています。
(国共済法第99条、地共済法第113条)
このように見ると、民間のキャッシュバランスプランと同じ仕組みだと言えます。
しかし、この制度は民間とは決定的に異なる点があります。
それは、「掛金率の引き上げができない」ということです。
国共済法・地共済法では、費用の負担についても定められています。
ポイントは、以下の2点です。
①掛金の負担は本人が50%、国(地方公共団体)が50%
②本人分の掛金率の上限は7.5/1000、国の負担と合計すると15/1000
また、この制度の開始時点での掛金率は、上限の15/1000(本人分は7.5/1000)を適用しています。
つまり、法律で定められている掛金率の上限をすでに適用して、制度運営を行っていることになります。
このため、「年金財政に不足金が発生した場合は、特別掛金率を設定して不足金を償却する」という、企業年金では当たり前に用いられている措置は使えません。
したがって、この制度の財政運営では「大きな不足金を発生させることはできない」ことになります。
企業年金の感覚では、「DB年金でありながら、不足金を絶対に発生させないように運営する」ことは極めて難しいと思われます。
この制約があるため、年金払い退職給付の制度運営では、色々な工夫がなされています。
どのような工夫がなされているかについては、また別の機会にご紹介してみたいと思います。