資産区分を伴う区分経理を実施するためには、各ファンド(資産区分)毎の運用可能資金を把握することが不可欠になります。
区分経理実施前は一般勘定全体で把握していた運用可能資金を、各ファンド(資産区分)毎に把握できなければ、ファンド単位でアロケーションをすることは不可能です。
まず、生保会社のキャッシュフローには、どのようなものがあるかを確認してみましょう。
生保会社のキャシュフロー
では、これらのキャッシュフローを基にして、各ファンド単位での運用可能資金を把握するためには、どのような仕組みが必要になるでしょうか?
これは、次の二つの要件を満たす仕組みを作れば解決します。
①キャッシュフローが発生したときに、それがどのファンドに帰属するかを把握し記録できること。
②その結果、ファンド毎のキャッシュ残高がどれだけあるか把握できること。
次の検討課題は、「各ファンド毎のキャッシュフロー管理のレベル」です。
つまり、「一般勘定全体のキャッシュフロー管理と同様のレベルで各ファンド毎のキャッシュフロー管理が必要かどうか?」を検討することが必要です。
これは、言い換えれば、
(a)各ファンド毎に資金繰りを行い、資金ショートを防ぐ
(b)資金ベースのキャッシュ残高(銀行取引口座の残高)を各ファンド毎に把握する
ことが必要かどうかを検討する必要があります。
仮に上記のレベルが必要とすれば、取引口座をファンド単位で分けることや、いわゆる仮受金のような科目で受けいれている資金もファンド別に分ける必要が出てきます。
それこそ大がかりな業務の見直しや、システム開発の必要性が出てきます。
この問題については、言うまでもなく、「資金ベースのキャッシュフロー管理は、従来通り一般勘定全体で行う」こととしました。
その理由は、以下の4つです。
(a)新たに導入する区分経理はあくまで一般勘定を内部的に分けるものでり、一般勘定全体で資金ショートしなければ問題ないと考えられること。
(b)実際の運用方法を考えると、各ファンド毎のキャッシュ・ポジションは日々把握できなくとも、月に1回把握できれば十分と考えられること。
(c)個々の入出金をファンド単位にリアルタイムに把握することは(当時の実務では)現実には困難である。
例えば、当時は、保険料であれば入金から保険料計上までに2~5日程度かかっていました。
(d)事業費のように配賦を伴うキャッシュフローを、リアルタイムに各ファンドに賦課することは困難であること。
ファンド単位のキャッシュフローを資金ベースでは把握しないという前提にたてば、その把握方法として次に考えられるのは経理情報を用いることです。
すなわち、「(実際の入出金日とは異なる場合もありますが)取引情報が経理された日をもって、ファンド単位のキャッシュフローが発生したとみなす方法」になります(下の例を参照)。