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仮想通貨のいかがわしさ ~ クルーグマンの批判

FTXの破綻では、多くの投資家が巨額の損失を被っているようです。
また、日経の記事によると、暗号資産バブルの崩壊により、僅か1年で2兆ドル(240兆円)の時価総額が失われたとのことです。

FTXへの投資家の中には、カナダのオンタリオ州教職員年金基金(OTPP)も含まれているというから驚きです。
公的年金であるOTPPは、リスク管理の面でもERM(統合リスク管理)を実践していることで知られています。
リスク管理部門の人たちは、仮想通貨のリスクや収益源泉をどのように評価していたのでしょうか?
いずれアニュアルレポート等で総括をするはずなので、注目したいと思います。

と言っても私自身、それほど仮想通貨や暗号資産に詳しいわけではありません。
10年以上前のビットコインが話題になり始めた頃に、簡単な解説書を読んだことがあるだけです。
ビットコインの埋蔵量には上限があること、採掘には膨大な電力が必要なこと、ブロックチェインという技術が使われていることなどは、一応知っています。

しかし、解説書を読んだ時に、仮想通貨について、どうしても理解できないことがありました。
それは「電子記号に過ぎないビットコインが、どうして通貨としての価値を持つのか?」という点です。
この点が良く分からずにもやもやとしていたのですが、ある時にクルーグマンのコラムを読んで「やっぱり自分の疑問はまっとうなんだ」と確信しました。

ノーベル経済学賞の受賞者でもあるポール・クルーグマンは、ずいぶん前からNY TIMESにコラムを書いています。
英語の勉強にもなるので、私は彼のコラムをなるべく読むようにしていました。
(最近はあまり読めていませんが・・)。

2013年の12月にクルーグマンは “Bitcoin Is Evil”というタイトルの記事を書いています。
この記事の中で、彼は私が疑問に思っていた点について、以下のように述べています。

To be successful, money must be both a medium of exchange and a reasonably stable store of value. And it remains completely unclear why BitCoin should be a stable store of value.

(通貨として)成功するためには、お金は交換手段であると同時に、合理的に安定した価値の貯蔵物でなければならない。
そして、なぜビットコインが安定した価値の貯蔵物であると言えるのかは、全く不明である。

Underpinning the value of gold is that if all else fails you can use it to make pretty things. Underpinning the value of the dollar is a combination of (a) the fact that you can use them to pay your taxes to the U.S. government, and (b) that the Federal Reserve is a potential dollar sink and has promised to buy them back and extinguish them if their real value starts to sink at (much) more than 2%/year.

金の価値の根底にあるのは、他のすべてが失敗した場合、それを使ってきれいなものを作ることができるということである。
ドルの価値を支えているのは、(a)米国政府への税金の支払いに使えるという事実と、(b)連邦準備制度が潜在的なドルの吸収口(流し台)であり、ドルの実質価値が年率2%を(はるかに)超えて下落し始めたら、連邦準備制度がドルを買い戻して消滅させると約束していることである。

I have had and am continuing to have a dialogue with smart technologists who are very high on BitCoin — but when I try to get them to explain to me why BitCoin is a reliable store of value, they always seem to come back with explanations about how it’s a terrific medium of exchange. Even if I buy this (which I don’t, entirely), it doesn’t solve my problem. And I haven’t been able to get my correspondents to recognize that these are different question

私はこれまで、ビットコインを高く評価する賢い技術者たちと対話を続けてきたし、これからも続ける積りだ。
しかし、彼らになぜビットコインが信頼できる価値の貯蔵手段なのかを説明してもらおうとすると、いつも、いかにすごい交換媒体かという説明が戻ってくるように思える。
たとえ私がこれを買ったとしても(全く買ってないが)、私の問題は解決されない。
そして、私は、対話相手たちに、これらは異なる質問であることを認識してもらうことができていない。

このコラムを読んでからは、ビットコインに対する興味がなくなりました。
この記事で述べられている素朴な疑問(「なぜビットコインが信頼できる価値の貯蔵手段なのか?」)については、答えがないと考えるからです。

言い換えればビットコインには、本源的価値がないと考えるからです。

私の知り合いにもビットコインに投資していた人がいました。
彼と話したときに「ビットコインには本源的価値がないよ」と言ったら、彼は「でも埋蔵量が決まっているんです」とその希少性を強調していました。

金やダイヤモンドのように、そのもの自体に用途があって希少なのであれば価値は高いでしょう。
しかし電子記号に過ぎないビットコインは、いくら希少であっても使い道がありません。
「投資対象としてとらえると、収益源泉が見当たらない」というのが、私の意見です。