今回は、最近の年金関連の話題で特に驚いたことを取り上げてみます。
去年の11月に「みずほフィナンシャルグループが2024年度から企業年金を確定拠出年金(DC)に一本化することを決めた」という報道がありました。
これには正直とても驚きました。
みずほフィナンシャルグループの経営を考えた時に、企業年金を全面的にDCに移行すること自体は驚きではありません。
世界的にDBからDCの流れが進んでいることは周知のことです。
またその背景としては「時価ベースの財産法での企業価値評価」があると考えています。
IFRSはその方向に進んでいますし、保険会社向けの新ソルベンシー規制も「時価ベースでの財産法による企業価値評価」の思想が根底にあります。
この思想に基づけばDBが経営上の負担になることは自明ですね。
実際、DCよりもDBを好む会社が多いわが国でも、数年前から全面的にDCに移行する会社が増えてきています。
メーカーではパナソニック、ソニー、証券業界では野村や大和などがすでにDCに全面的に移行しています。
それでも、今回のみずほFGの決断には驚きました。
なぜなら「信託銀行はDBを守るというスタンスをとっていた」からです。
信託銀行の年金部門の人と話をすると「DBを守りたいという意識が強い」と感じます。
例えば、DBとDCのイコールフッティングの考え方に基づき、「DBとDCの合計で掛金の拠出限度を定める」という案が社会保障審議会企業年金部会に出されたことがありましたが、信託銀行の年金部門の人はこの考え方を強く否定していました。
企業年金制度の役割は「加入者の老後資産形成」です。
それはDBもDCも変わりません。
「限られた非課税財源を用いて、有効に加入者の老後資産形成を図る」という観点では、DBとDCのイコールフッティングという考え方には合理性があります。
DBだけを特別扱いすることは理屈が通りません。
理由がないにも関わらず信託の人がDBを優先するのは「それが信託銀行にとっての大事なビジネスだからだろう」と想像していました。
そういうスタンスと今回のみずほFGの決定とでは、考え方がバッティングしていますね。
私が驚いたのはその点です。
「DBのビジネスにはマイナスになるかもしれないが、経営上はDCへの全面移行が必要」と経営者の方は判断したのだと思います。
それだけ「DC移行には経営上のメリットがある」と判断したのだろうと思います。
今後、他のメガバンクがどのような判断をするかが注目されるとともに、DBからDCへの全面移行の流れが、わが国でもさらに加速するだろうと予測しています。