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DC担当者は必読 ~ 金融庁のプログレスレポート2025

今年の6月に金融庁が「資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2025」と題したレポートを公表しています。
日経新聞等のニュース媒体ではこのレポートに関する報道はなされていないようですので、このサイトでレポートの注目点を取り上げてみたいと思います。

今回のレポートでは、「企業年金(DCおよびDB)についての提言がなされている」ことが、特に注目されます。
厚労省が管轄している企業年金について、金融庁がかなり踏み込んだ提言をしています。
特に、DCに関しては金融庁の問題意識を反映した分析と問題提起がなされています。

まずは、レポートの構成を確認してみましょう。

「資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2025」の構成

上に掲載した目次をみると分かるように第2章でDCを取り上げ、第3章ではDBを取り上げています。
特に、第2章では元本確保型100%で運用している人に着目した分析結果を提示しています。
DCに関心を持つ者にとっては非常に興味深い内容ですので、以下ではそのいくつかを紹介してみます。

「元本確保型商品のみで運用する者」の人数と全体に占める割合(2024/9末、企業型DC)

(注)「加入者等の合計」には、資産残高がゼロの加入者等を含まない。

元本確保型商品がDC運用商品として相応しいかどうかについては、これまでも何度も議論されてきました。
「実質価値の維持という観点から元本確保型商品は相応しくない」という意見がある一方で、「個人がリスクを負うDCにおいては元本が毀損する可能性のある運用商品よりも元本確保型の方が適切」と言う意見もあります。
今までの議論では、結局「個々人の選択を尊重する」というトーンで議論は終わってきました。

プログレスレポートでは「元本確保型商品のみで運用する者」について、他にも様々な観点での分析結果を掲載しています。

年代別にみた「元本確保型商品のみで運用する者」の人数・割合(2024/9末、企業型DC)

「元本確保型商品のみで運用する者」の割合は、若くなるほど小さくなっています。
若い人の方が運用期間が長くリスクをとることができますので、当然の結果ですね。

ただ、運営管理機関の業態別にみると、「地銀・信金・労金」・「損保」の割合は、各年代において、全体の割合よりも高くなっているようです。
「地銀・信金・労金」・「損保」を運営管理機関としている企業のDC担当者は、一度自社の状況を確認した方が良いと思います。
(なお、自社における「元本確保型商品のみで運用する者」の割合は、運営管理機関に照会すればわかるはずです。)

加入年度別にみた「元本確保型商品のみで運用する者」の人数・割合


加入時期が古くなるほど「元本確保型商品のみで運用する者」の割合が大きくなっています。

「元本確保型商品のみで運用する者」の割合で区分した規約の分布(2024/9末)

これも興味深い分析ですね。
「元本確保型商品のみで運用する者」の割合が10%未満の規約の割合が32%あります。
「これらの企業では、なぜ元本確保型商品のみで運用する者が少ないのか」を調べると、DCガバナンス上で有益なヒントを得られるのではないかと思います。

プログレスレポートにはここで紹介した分析以外にも、運営管理機関の収支状況などの興味深い情報が掲載されています。
人事部や労働組合でDCを担当されている方々には一読されることをお勧めします。